
アポロンの嘲笑 中山 七里さん (著)
東日本大震災、原発事故をテーマにしたサスペンス。
東日本大震災からまだ5日後、管内で殺人事件が発生。刑事である仁科と、被疑者で逃亡中の加瀬の視点が交互に描かれ物語が進んでいきます。
読み進めていても、凄惨、陰惨、壮絶、そんな類の言葉しか浮かんでこず、安堵できる間はありません。登場人物たちが背負っている人生の重み、震災の凄まじさ、原発事故が引き起こす恐怖、これらがあいまって、読み進めていても心がずっと重苦しいままです。
だけど、はやくこの物語の結末を知りたい、そして全ての命が報われて欲しいというそんな想いから、心の重苦しさとは反してページを捲るスピードは終盤に向けてどんどん加速していきました。
命のはかなさ、はかないゆえに尊い、平穏な日常生活では忘れてしまうこの心理(真理)を、そこに在る命が常に当たり前でないということに気付かされます。
自分の命以上に大事な家族という存在、そして自分という存在もまた家族にとっては大切な存在であるはず。だから自分も生きなければいけない。そんな生への執着が必要です。
健康で健全に過ごす。この当たり前を心掛けていきたいな、と読了後に誓いました。
小説って様々な気づきを与えてくますが、中山七里さんの小説にはいつもたくさんの示唆をもらっています。この「アポロンの嘲笑」も是非おすすめです。
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