今回は宮下奈都さんの小説『羊と鋼の森』のご紹介です。
ストーリーはもちろんおすすめなのですが、この美しい文体で描かれる世界観に触れるだけでも大きな価値があると思います。
『羊と鋼の森』あらすじ(※ネタバレなし、導入部分のみ。)
高校の体育館で出会った一人の調律師。ピアノや音楽の知識が全くない少年が、調律されていく音色の清さに心奪われ、卒業後は調律師を目指す決意をする。専門学校を卒業しその想いは叶う。しかも学生の時に出会った調理師と同じ職場で働くことに。しかし一人前の調理師までの道のりは険しく、平凡な自分にこの職に就く資格があるのかと葛藤の日々が続く。
『羊と鋼の森』おすすめのポイント
美しい文章。丁寧に紡がれた言葉たち。圧倒的な語彙力で、衝撃を受けました。
語彙力。どれぐらい単語を知っているかという意味で語られている場合が多くあります。もちろんこれは語彙力を構成する要件として基本的な要素ではあります。ただ一方で、知っている単語をどれだけ使いこなせるか、という要件もあります。むしろ後者の方が大切なのだなと、この小説を読んで強く感じました。
本書は、誰もが知っている単語で、誰も表現できないような美しい文章が紡がれています。ぜひ一度この美しい文章を体験していただきたいと思います。
ストーリーとしては、平凡な主人公がピアノの調律師という少し特殊な職業に就き、周りの才能ある先輩達と自分を比べながら、そして迷いながら成長する過程が描かれています。
自分の仕事ぶりに自信が持てない時にこの小説を読むと、共感とともに示唆がきっとあるはずです。仕事って、情熱よりも真摯さが大事なんだなと感じさせてくれます。仕事に対する迷いが、いつしかこだわりに変わり、仕事への我が出る瞬間。そんな瞬間がきっとくる。そう思わせてくれる小説です。
ラスト、もやもやとした霧が晴れ、一気に心も視界も晴れていく感覚、読後感も爽快でおすすめです。
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